
原作は、作者山岸忍自らが巻き込まれた検察の冤罪事件を描いた同名作『負けへんで』(文春文庫)。
書籍の企画・構成は、ジャーナリステックなライターとして活躍する赤澤竜也。
脚本は、伊丹十三門下の吉川次郎。
監督は、娯楽時代劇『超高速!参勤交代』(14)、社会派ドラマ『空飛ぶタイヤ』(18)等、幅広いジャンルの作品を作り上げて来た本木克英が、逆転エンタテイメント作品に仕上げた。
ヘルメットにサイクルウェアの上下で自転車で淀川沿いを走行する藤堂繫(内野聖陽)。堂島、桜橋と走って、「おはよう」と出迎えた警備員に自転車とヘルメットを預ける。
不動産デベロッパー・ローブコーポレーションの玄関ロビーに入る。
「2015年12月」
社員が藤堂を取り囲む。そのなかには、要領の悪い木下郁夫(矢柴俊博)もいる。
若い社員が言う。「社長、大国町の中古マンション、セイナンビルとの僅差で競り勝ちました」
「そうか幾らや?」
「4億五千万円、利益率25%は固いです」
「よっしゃー、ボーナス期待しとけよ」
走り込んできた社員。
「社長、長堀の例の土地、あと一歩なんです」
「幾らや?」
「あと1本!」と書類を付き出し「お願いします!」
「1億か。全部で12億やな。分かった」
サインし、印を押し、「平山! 絶対に取れよ。期待してるで」。
藤堂はエレベーターで社長室へ行き、スーツに着替えて出てくる。
「おはようございます!」「あー、おはよう!」、側近で大柄なツチヤ(田中美央)が待ち構えていた。
「あ~、社長、この土地の仕入れを検討してください」と木下が追いかけて来た。
藤堂は歩きながら書類を受け取る。
「文の里から歩いて2分。天王寺も歩いてゆけます」
「この土地は、あかんやろ。聖倫学院高校の敷地。前に高橋がやった案件や」
藤堂は書類の地図を広げる。
「南向きやし、マンションならファミリー向けで600はいける。物件としては申し分ないねんけどなあ。ややこしい連中が周りにいるちゅう話ちゃうんかな」
内野聖陽の関西弁は軽妙で自然に聞こえる。
木下はもじもじしながら「はい…はい…経営者が変わるんです。なので大丈夫なんです」
名刺を取り出し、「社長…次の理事長になられるお方です」
名刺には「NPO法人サクセス代表 廣戸久美子」とある。
「廣戸久美子、誰や? ちゃんと調べたんか?」
「はい、学校教育に高い理想をお持ちの方だそうです」
「そもそも、なんでこんなに手付が高いねん。せいぜい売買契約の1割がええとこやろ。30億って」
「学校再建資金です。学校の移転費用や理事さんたちの…」
ツチヤが藤堂にアイパットを見せて、「廣戸久美子。過去に逮捕歴があります」
“助成金搾取容疑 コンサル会社代表ら逮捕 相次ぐ不正横行の背景は”廣戸久美子(山村紅葉)の写真入りだ。
「はー、お前、調べてへんやないか」
「はい…」
なんでも「はい…」で押し黙る木下である。
「今は検討出来んな。以上!」
見かねてツチヤがいう。
「あの人、なんであんな仕事出来ひんのですかね。ほんまにダイハン不動産で資料部長やってたんかな」
「まあまあまあ…そういうな。あれでも昔はダイハンで修羅場潜った戦友や。悪いがもう少し面倒を見てやってくれ」
「はー」
藤堂は仕事に厳しいが人情家でもある。
森ノ宮のランニングジムで、不動産会社KANOトラストの社長加納武史(三浦誠己。基本、今回の三浦誠己は善人である)と出会う。藤堂は彼から何人かの社員を紹介されていた。木下もだ。加納は藤堂が長堀の土地を狙っていることを知っていた。ただ、その土地は信幸ホールディングスの君塚大作(北村一輝)も狙っていた。彼は狙った獲物は逃さない。反対に担当の平山は詰めが甘く、土地は君塚の手に落ちる。
長堀の土地は、自宅マンションの向かいの土地で藤堂の思い入れは相当だった。
初対面の君塚を訪ね、説得して1割増しで譲ってもらう。君塚はそんな藤堂にほれ込む。
関西ネイティブの北村一輝の関西弁は軽妙で面白い。内野聖陽とのやりとりも漫才調になる。
藤堂の会社は、売上げ2000億を達成し、東証一部上場、それを記念してパーティが開かれる。そこで藤堂は「この業界に入った時、ひとつだけ心に決めたことがある。それは絶対にウソはつかんいうことや。お客さんに絶対にウソはつかん。仲間に対してもそう…ほんまやで」という。
そんな折、木下から聖倫学院高校から売り渡し承諾を得たとの話があった。
藤堂は、2019年7月、ランニング中にケガをしてじん帯の手術を受ける。
病室で新聞を見ていると、「学校法人30億円不明の疑い 高校の土地売却手付金」の記事。聖倫学院高校のことである。
2019年10月29日、関西地方検察庁から藤堂のもとへ電話が入る。
担当の女性特捜検事、鈴鳴通子(松本若菜)は、「社長、いらっしゃ~い!」という、フレンドリーで軽妙なしゃべりの美人で、藤堂も心を許してしまう。
やがて、藤堂は30億の業務上横領の罪で逮捕される。すでに逮捕されている学校の理事長と、藤堂の部下である社員・木下と共謀した容疑であった……。
藤堂の弁護団は、中島圭樹(藤本隆宏)、井上マリ(川添野愛)、裁判官でありながらも弁護士職務経験中の東幸紀(竜星涼)。そして団長には無罪請負人の誉れも高い大和田政樹(石丸幹二)が参加する。
検察は人質司法をとり、藤堂は精神をむしばまれてもゆく。そんなときに、外資系ファンドマネージャーである恋人の林美奈(美村里江)から手紙が来る。仕事をしばらく休んで藤堂のケアーをしたいという。“だから、負けないで!”
本木克英らしく淡々とストーリーがつづられてゆく。検察不祥事が続く今の日本でまさにタイムリーな公開である。
内野聖陽の映像仕事の代表作のひとつともなろう。
戸田学
11月27日(金)公開。
監督:本木克英(『空飛ぶタイヤ』『超高速!参勤交代』)
脚本:吉川次郎
主演:内野聖陽
出演:松本若菜 竜星涼 美村里江 石丸幹二 矢柴俊博 田中美央 三浦誠己 藤本隆宏 北村一輝
原作:山岸忍『負けへんで』(文春文庫)
企画・製作:信和ホールディングス株式会社/株式会社ツクヨミホールディングス
©2026「負けへんで」製作委員会
配給:ギャガ
