
原作は、ベストセラー作家・東野圭吾の累計発行部数160万部を超える同名小説。
脚本は、『聖の青春』(16)、『マイ・ブロークン・マリコ』(22)、『平場の月』(25)の向井康介。
監督は、『あゝ、荒野』(17)、『正欲』(23)、『サンセット・サンライズ』(25)の岸善幸。
主人公は、容疑者の息子と被害者の娘と相対する立場の人物。演じるは、松村北斗と今田美桜。
「白鳥とコウモリ」のタイトルは「光(白鳥)」と「闇(コウモリ)」は、単純には割り切れないということから。
かつて松竹映画が得意とした野村芳太郎監督によるミステリー大作の今日的な継承作品のようにも思える。
わらべの曲「もしも明日が…。」がトランジスターラジオから流れる。
「1984年5月22日」
拘置所。廊下の突き当りの部屋。
「福間を起こせ!」と刑事が言う。「また取り調べですか」と警官。二人は画面手前に歩いてくる。警官がドアの一つの鍵を開け、その先の廊下の端の留置場。「第一号室」。福間淳二がぶら下がっている。「非常ベルを鳴らせ! 鍵を渡せ」。非常ベルが鳴り響く。
「2017年11月11日」
喫茶店の窓側の角席で、白石健介(中村芝翫)がコーヒーを前にして、指先でテーブルをポツポツと叩いている。
「2017年11月22日」
通勤時の大勢の人波の中に警視庁捜査一家の刑事、五代努(柄本佑)の姿が見える。イアホンでクラシック音楽を聴きながらの急ぎ足だ。横断歩道を渡り、やがて野次馬やマスコミが集まっている場所に張られたロープを越える。
「港区新田の新橋」
五代が乗用車の後部ドアを開けると、左腹にナイフが刺さった白石健介の死体がある。
GPSで江東区隅田川テラスで、白石の携帯が見つかる。
「港区湾岸署」
捜査員がモニターを遣っての説明を聞いている。五代もいる。「よーし、この一週間、橋を通ったものを徹底的に捜査しろ」。
被害者白石健介の評判はよい。「もし白石さんを恨んでいる人がいたとしたら、そいつはバカですよ」。
五代は相棒の中町役(前原滉)と共に愛知県へ向かう。持っているカラーコピーには、倉木達郎(三浦友和)の免許証が写っている。
古い住宅。チャイムを押すと倉木達郎が出てくる。「警視庁のものです」「倉木です」。
和室へ通されて、「で?」「白石健介さんについてです」「はー」「殺害されたことはご存知ですか」。倉木はインターネットで調べ、遺産のことで白石に相談したことがあるという。東京に息子がいて、東京へはよく行く。最近は、11月2日に泊まって翌日には帰ったという。部屋には「富岡八幡宮」のお札があった。
捜査本部には、門前仲店の小料理屋「あすなろ」での倉木の目撃情報が寄せられた。
そして被害者の白石が、この店がよく見える喫茶店に2時間も滞在していたことも判明する。
五代は中町と「あすなろ」を訪ねる。浅羽織恵(井川遥)が応対する。店の主人は母親の浅羽洋子(風吹ジュン)。五代は倉木の写真を見せる。「この男性をご存知ですか?」「え、倉木さんです」「よく来られますか?」「2~3ヵ月に1度ぐらい」。そこへ主人の洋子が帰って来る。ぶっきらぼうで、「そんな脅しは効かない。うちの夫は警察に殺されたんだから」という。
五代と中町は、愛知県警の刑事から「1984年5月15日」に東岡崎駅で金融業を営む、詐欺師の灰谷昭造(三浦誠巳)が殺され、灰谷に騙された福間淳二が容疑者として捕まり、警部補と巡査官の厳しい取り調べで自殺していたことが判明する。当時の手帳に「倉木」の名前がある。
さらに11月3日に東京駅の喫茶店で倉木と白石が一緒にいるモニター映像が見つかる。
再び、五代と中町は倉木宅を訪ねる。「11月3日の夕方、あなたは東京駅の喫茶店に入りましたね。映像にはあなたと一緒にいた人が映ってました。白石さんです」。倉木の左手の指がピクリと動く。「あなた第一発見者だったんですね。あすなろに行くのはその件が関係してるんですか?」「もういいです……白石さんを殺したのは私です。それから灰谷昭造を殺したのも私です。全部私がやりました」。
倉木和真(北村北斗)は、クライアントを前にモニターでコマーシャルのプレゼンをしている。上司からほぼ確定したから安心していると聞かされる。そこに携帯電話が鳴る。「はい、もしもし……」。顔が曇る。「は…はい……、達郎は私の父ですが…」。
幻想的なCM画像が映り、右側にタイトルが出る――。
国選弁護人の(宇野祥平)から、父親の達郎が、息子の倉木和真には会わないと聞かされる。
葬儀場では、白石健介の妻、綾子(吉田羊)が泣き崩れ、娘の美令(今田美桜)が気丈に支える。
倉木和真は「週刊世報」の記者、南原拓実(松尾諭)に突撃取材をされる。
倉木達郎の検察調書を読み、息子の和真も被害者の娘である白石美令も互いの父親らしくない言動だと疑問を持つ。
殺害現場の隅田川テラスへ花束を供えに行った美令は、現場で手を合わせる和真と出会う……。
骨太なミステリー映画。2時間25分。時間の配分が上手いなと思った。
今田美桜の心情が表情に反映する芝居はよい。
映画的にはストーリーテラー的な働きをする柄本佑の刑事はほぼ無人格に近い。ただ、 松竹映画らしく途中で小津安二郎監督『麦秋』(51)を柄本佑の刑事が見ている場面が彼の人間性を表現する。
観終わって「つぐない」という言葉が浮かんだ。
主題歌は大森元貴の「灰色」。
9月4日(金)公開。
戸田学






『白鳥とコウモリ』ビリング
■キャスト
松村北斗 今田美桜
柄本佑 / 前原滉 井之脇海 宇野祥平
松岡依都美 松尾諭 丸山智己 三浦誠己 斉藤陽一郎
原田琥之佑 のせりん 漆山拓実 五頭岳夫
中村芝翫(特別出演) 井川遥 吉田羊 風吹ジュン
三浦友和
■スタッフ
原作:東野圭吾『白鳥とコウモリ』 (幻冬舎文庫)
監督:岸 善幸 脚本:向井康介 音楽:網守将平
主題歌:大森元貴「灰色」
(ユニバーサル ミュージック / EMI Records)

©2026「白鳥とコウモリ」製作委員会
配給:松竹
